お久しぶりです。さくらです。
新型コロナウイルスの影響で、図書館も閉館し多くの本屋さんも休業で、本がたくさんある場所に行って本棚を眺めているのが癒しの身としては、早く元の生活に戻って欲しいと願うばかりです。
こんな状態が続くと読む本がなくなる!
いいえ嘘です。もちろん積読ならありますとも。
せっかくなので積読の山を崩していきましょう。
クレア・キップス 梨木香歩:訳
「ある小さなスズメの記録
-人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯-」
(2010、文藝春秋)
もう何年も前に買ったままの本です。
本好きの知り合いたちが、良い本だよねと話しているのを聞いた直後くらいに古本屋さんで見つけたのです。
第二次世界大戦中のロンドン郊外で、寡婦の老婦人が足と翼が変形している一羽の小スズメが巣から落ちているのを見つけて拾いました。
おそらく、親から生きられないと見捨てられたのでしょう。厳しい自然の掟の中から転がり落ちた雛は、看病しても助からないだろうと思われました。しかし、スズメは力強く餌を求めて鳴いたのでした。
怪我した鳥を看病し回復したらとる行動としては、野生に返すのが普通です。
しかしこの小スズメは足と翼が変形しているため、部屋の中ですら満足に飛べません。 なので、そのまま老婦人の家族となりました。
後から立派な名前がつけられましたが、「坊や」という呼び方にしかスズメは反応しなかったのですから。
刷り込みによって老婦人を親と思っている小スズメは、まるで自分も老婦人と同じ人間であると思っているような振る舞いを見せます。
けれど他の鳥からの求愛を受けると鳥としての本能が反応する。奇妙な、特別なスズメです。
読みながら、今のコロナウイルスで閉塞する世界に重ねてしまいました。
本を読む行為とはそういうもので、今の自分のおかれた状況や気持ちを、知らず知らずのうちに重ねて拾ってしまうものと思っています。
スズメは飛べないので外に出られません。一生、家の中で過ごしました。
舞台は第二次世界大戦中。住民は爆撃機の襲来におびえていました。
そんな中、なんとスズメは賢く芸を覚え、住民たちを楽しませたのです。
ハンデがありながら力強く生き抜こうとする姿と、とにかく可愛らしい姿の記録です。
(さ)