実行委員ブックリレー7

わたしは専ら人に薦められた、もしくは人が薦める本に手を出すタイプです。 手を出す、というのは、手に入れるものの全部読む訳ではなく、積んであるのも多いから・・・手に入れて満足することがしばしばです。


中学生の時の物理の先生が変わった先生で、わたしが大学生の時に突然送ってくれた本が「蝉しぐれ(藤沢周平著)」でした。 この本が、藤沢周平小説を読み漁るきっかけになった本です。


江戸時代、とある地方の 藩が舞台で・・・ 近所に住む 文四郎 と ふく はやがて大人になり、人の親になる。 物語の最後に残るのは蝉しぐれの余韻。


一番始めにこの本を読んだのがどんなシチュエーションだったか忘れてしまったけど、 まさに夏休み、真夏の蝉の大合唱を聴きながら・・・ というような気がします。 秋に向かって命を燃やしながら・・・ちょっと切ない。。

藤沢小説にどハマリし、その小説の多くの舞台である海坂(うなさか)藩のモデルである山形県は鶴岡にひとり旅したのでした。  学生ひとり旅で市内の寂しげなビジネスホテルに泊まったのをよく覚えている。

次にいくときは 坂茂設計の水田ホテルに泊まってみたい・・・。

早く、安心して蝉しぐれの世界、海坂藩を再訪することができる世の中になりますように。

(ま)

実行委員ブックリレー6

「花は泡、そこにいたって会いたいよ」( 初谷むい /書肆侃侃房 )

穂村弘のエッセイを読んだことがきっかけで短歌に興味を持ち、以来気になった歌人の歌集を読むようになりました。2年くらい前にSNSでものすごく評判になっている北海道の歌人がいると知り、帰省の際に買い求めたものです。

言葉の切り取り方や選び取る力、またそれを繋げる感覚と言えばよいのか、そこのセンスにすごく惹かれ、穂村弘や山田航の短歌に出会った時と同じものを感じとても衝撃を受けたのを覚えています。

短歌に詳しいわけではないので、もっぱら自分が好きかどうかでしか歌集を買ったり読んでみたりということはしないのですが、現代の歌人たちはある程度大人の年齢になってから短歌を始めた人が多いような印象があります。
色々な人生経験を経てきたからこそ生まれた歌なのだろうなと思うけど、もっと若い頃、例えば高校生や大学生の頃だとどういう短歌を作っていたのだろう、見てみたいと思うことがあるのですが、この著者は進行形で高校・大学とその時代時代にリアルタイムで短歌を作っていて、そこに触れることができた貴重な歌人でもあります。

これからいろんな経験を重ね、どのような作風になっていくのかとても楽しみです。
(き)

変なめがねやめてあなたは東京へ あのめがねもうかけないんですか


実行委員ブックリレー5

この本も積読の中から。
書店で装丁に惹かれてしまい、一発で買ってしまった本。
作者が作者なのだから、装丁に惹かれるのは当然かもしれませんが。


吉田篤弘「うかんむりのこども」(2013、新潮社)


子供の頃から図書館に通いつめては本を読んでいましたが、辞典も好きになったのはいつだろう。おそらく授業で使うようになってからだろうか。
漢字辞典なんかも好きで、ぺらぺらとめくってはなるほどなるほどと思ったりしていました。


「うかんむり」と書名にあるとおり、漢字、文字に関するエッセイ集。
女が三人集まると「姦しい」なんていうのはよく知られていますが、登場人物である女性が三人出てきて、わいわいがやがや話して「姦しい」に行きつく。けれど、そこで終わるわけではなくて、そこからどんどん違う漢字にも派生していくのが面白い。


「目」や「心」や「門」を使った漢字など、違和感もなく進んでいくストーリーに、そうかこんな漢字もあったかと驚くようなものも出てきて、読んでいて気持ちがいいし、なにより漢字の成り立ちって自分が知らないだけでもっともっと面白いんだなぁと思わせてくれます。


こんなになにげなく使っている漢字ですが、いい加減に作ってあるわけはもちろんなくて、こうやって人は文字を発明してきたのだなぁと、少し大げさなことも思うばかり。
(さ)

実行委員ブックリレー4

すっかり初夏の空気ですね。

毎年これくらいの時期になると、今年の夏はどこの山に登ろうか、会社の山岳部の間で話題になります。

今回ご紹介したいのは、「街と山のあいだ」(若菜晃子著)。

山と山にまつわるエッセイ集です。

都市に住み、働くわたしにとって、山登りは心と身体の解放の手段です。

いつもは見かけない植物や広い空、開けた眺望と周囲に見える山々の風景。

山での出会いも…普段とはちがう時間を噛みしめる夏山のひとときが心を膨らませてくれます。

そして、ひたすら登り続けて登頂、その後は足を踏ん張って下り続け、麓に帰ってきたときの達成感が身体を解放(というよりもぐったり疲労ですが・・・)してくれます。

−(引用)山に登っていてしんどいのは、登り始めだ。街の暮らしでなまった体やよどんだ心が重く、自分で自分をもて余してしまう。−

山から都市に戻ってきたら、見える都市の景色が少し違っていたりします。

この本は、まさにわたしのように、都市から山へ通う(わたしは年1くらいですが)筆者の体験が綴られます。

−(引用)自然は街のなかでも私たちとは違う時間の流れを生きていて、そのことをいつも黙って伝えている。−

筆者が感じる思いに共感しながら、山登りを想像すると、家に居ながらにして心の解放が感じられる気がするのです。

今年の夏も、南か北か・・・アルプスの山に登りに行けることを願いつつ、この本を読んで山を想像してみようと思います。

ぜひ一度、山に登ってみてから読んでみてほしい本です。

(ま)

実行委員ブックリレー3

古本屋さんに行くといつも食に関する本に目が行くのですが、昔の料理本もそうで、この「子どもの料理」は愛にあふれたレシピがたくさん載っていて特に気に入っています。

レシピ動画なんて無い時代。 こういった昔の料理の本をパラパラと見ていると、 1枚の写真や1ページに収める言葉にも魅力的にそしてわかりやすく伝えようとする工夫が見て取れます。

この本を見て子供の喜ぶ顔を思い描きながら料理を作ったんだろうなとか 色々と想像するのですが、何よりも一冊の本を買ってまでして子供のために料理を作ろうとするその気持ちや気概に本という存在の大きさを感じます。

今年の大型連休は帰省もせず、もっぱら自宅で片付けや掃除、そして読書に勤しんでいるのですが、 もともとインドア派なので外出できないことが特に辛くはないのが幸いなところです。運動不足に加速がかかりそうですが、たくさんの本を読みたいな、と思っています。

(き)